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福翁自伝

「口述自伝」でもっとも有名な著書のひとつが「福翁自伝」ですね。 明治30年、福沢諭吉が知り合いの速記者に、自分の生き様を書き留めるよう指示して、自伝が作られました。

しかし、福沢はその速記者の前で語り出したものの、すべて委ねるのではなく自ら加筆し、あるいは書き改めたようですね。当時はレコーダーなどない時代です。すでに明治時代の教育界の重鎮であった福沢諭吉の語りを速記者がそのまま書き留め文章化するのは、たいへんな苦労があったと想像できますよね。

アメリカやヨーロッパの政治社会において、功成り名を遂げた人たちは、自分の体験を後世に伝えることが義務とされています。

才能があれば自ら書くことができますね。例えば、第二次世界大戦時のイギリスの英雄、ウィストン・チャーチルはノーベル文学賞を受賞したほどの文才を持っていて、その自叙伝はベストセラーになりました。だけど、才能がない場合は、まさに福沢のように語り手となってを記録者が文字にしてきたのです。

確かに、自分で自伝や自分史を書くことは並大抵のことではありません。日経新聞に長年掲載されている「私の履歴書」は、成功者たちの自分史ですが、そこには、日経新聞の文章作成のプロたちの推敲が入りますから、読み手にとってはとても読みやすい文章になっていきます。

私は、福沢の「口述自伝」を再現していきたいと思っています。それも普通の人々の。この時、私は「福翁自伝」における名もなき速記者の役割を果たしたいと思っています。

これから、福沢が遺した「福翁自伝」が、形を変えて数多く世に出されることを期待しています。

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