NPO法人日本自費出版ネットワークの認定資格である自費出版アドバイザーのことをアップした際、「高齢化社会の到来に伴い、自叙伝や自分史の制作は一種のブームになっているが、自費出版に関して適切な助言業務を行える知識を持ったアドバイザーが非常に少ない。『自費出版アドバイザー』に合格した者には、出版の世界でエキスパートとして活躍することが期待されている」というNPO法人の話をしましたね。
ところで、自費出版の〔自伝〕を時々読むのですが、その中には『波乱万丈の人生』や『山あり谷あり』、『切磋琢磨の日々』といった表現がやたら多いのが目に付きます。『波乱万丈』とか『山や谷』、『切磋琢磨』が飛び交う〔自伝〕は、初めは勢いがいいけれど、そのうちに書くことがなくなって霞んでいく、いわば「竜頭蛇尾」となってしまうケースが実に多い。
これは、おそらく書き手の思い込みがとても激しく、自分だけに不幸や災難が降りかかってきたという心境で書いたからでしょうね。確かに、〈自伝〉は、自分というものを中心に据えて書かれるべきものですが、自分中心にすべてが回転するという、謂わば天動説のように書いてしまうと読み手はうんざりします。
そうではなく、コペルニクスの地動説のように、自分はこの社会の一員として、太陽系の一惑星としての生き方を示すのだという思いで書くというのが、〔自伝〕の本質でしょう。
そのためには、私たちのようなライフヒストリアンが、顧客の『波乱万丈の人生』や『山あり谷あり』『切磋琢磨の日々』といった話を聴いて、地動説のかたちにして書き著していくほうがより良き〔自伝〕ができると確信しています。
私は常々、人は〔自伝〕によって、「自分はこう生きてきた」というのではなく、「自分はなぜ生きてきたか」を証明することが必要だと思っています。ライフヒストリアンは、顧客にその考え方をきちんと伝えることができます。口述による〔自伝〕を制作する意味のひとつは、まさしくここにあると言ってもいいですね。
自費出版、デジタル自伝、口述筆記、聞き書き言葉、AI音声認証、認知症予防、カタルシス(心の浄化)、後世の最大遺物、争族回避など、この市場が拡大していく要素が、だんだん増えてきましたよ。
ー続くー