回想法による自伝・自分史作成の認知的・心理的影響
私は、ライフヒストリアン、或いは回想療法士として、高齢者の自伝や自分史を作る際、介護施設での心理回想法やライフレビューの経験と技術とノウハウを駆使しています。
このことに関して、奈良県立医科大学医学部看護学科の古角美保子さん、木村満夫さん、澤見一枝さんの3名が、「地域在住高齢者の回想法を用いた自分史作成による認知的心理的な影響」と題して、研究成果を発表しています。
【目的】地域在住の高齢者に対し、回想法を用いた自分史作成を行い、認知機能や心理的な影響、回想の過程で生じた思いを明らかにすることにある。
【方法】在宅で自立して暮らす65歳以上の高齢者23名に対して、回想法を用いた自分史作成を週1回1時間、全5回行った。介入前後で認知機能評価と高齢者向け生きがい感スケール(K‐1式)を調査した。回想記録などの質的データは定性的に分析した。
【結果】認知機能評価のうち、即時再生が有意に向上した(P=0.000)。高齢者向け生きがい感スケール(K‐1式)では、有意ではないが数値は向上した。定性的分析により、回想の過程で生じた思いが明らかとなった。
【結論】自分史作成後に、「即時再生」が有意に向上し、生きがい感が向上する傾向が見られた。高齢者に対して、回想法を用いた自分史作成を行うことによって、高齢期をよりよく生きていくための一助となり得ることが示唆された。
このように、高齢者に対し回想法による自伝や自分史を作成することで、認知機能が改善され、心理的に良き影響が生まれることが明らかとなっています。
この大学だけでなく、現在、幾つかの大学や研究機関で「自分史の作成による認知症罹患者の認知機能の改善」や「認知症に対する予防」の研究や実証試験などが行われています。
自伝や自分史の普及に向けて、今後、これらの研究はどんどん進展していくので、その成果をしっかり把握し、解明していきます。
なぜ自伝や自分史を作成するのか?「顧客が自尊心をもってより良く生きるため」。まずここからですね。
