亡くなる前に自らの思いを記す「遺言書」。10月1日から、公正証書遺言が順次デジタル化します。また、自筆証書遺言もデジタル化の検討が進んでいます。遺言書はどう変わるのでしょうか。
QA方式で書き記します。
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A:今回のお話、将来的には、スマートフォンで遺言書を作ることができるようにすることも検討されています。
Q:でもどうして遺言書がデジタル化されるのでしょう。
A:理由の1つは、国が遺言書の利便性を上げて多くの人に書いてもらい、相続のトラブルを防いでほしいと考えているからです。この遺言書は現在主なもので2つの方式があります。
1つは公証人と呼ばれる専門家に作成してもらう「公正証書遺言」。もう1つは自分で書く「自筆証書遺言」です。それぞれメリット・デメリットがあります。
公正証書遺言は、公証人というプロが作って保管もしてもらえます。だから紛失の心配はありません。ただ、作成に手数料がかかります。金額は遺産の額などによって異なりますが、一般的には、多くの場合数万円程度です。
Q:自筆証書遺言は、文字通り自分で書くわけですね。
A:現在は本文の全部を自筆・つまり本人が「手書き」で書かないといけません。作成年月日や署名、押印も必要です。自分で作るので無料です。ただし、不備があると無効と判断されることもあります。
現在は法務局でこの遺言書を保管する仕組みも始まっています。しかし自宅にしまったまま、どこに置いたか分からなくなることもあります。後からトラブルになる恐れはこちらが大きいのです。
今回、公正証書遺言は10月1日から、全国で順次デジタル化が始まります。そして、自筆証書遺言もいま、デジタル化の検討が行われているところです。
例えば、東京の霞ヶ関公証役場。ここでは年間200から300通の遺言書を作っています。
Q:ここでが遺言書を作ってくれるんですね。
A:デジタル化される遺言書の見本です。文書ソフトを使います。今回、私の名前で作ってくれました。財産もこのように全部記します。どの財産をどう相続するかなど本人へ聞き取りを行い文章を作成していきます。
指示されたとおり、ペンで画面に自分の名前を書きます。そしてここを押すと、書面に記されました。続いて公証人もサインして、電子印を押すと完成です。完成した遺言書は電子データで保管されます。
Q:保管も紙ではなくデータなんですね。
A:文書をパソコンで作って電子サインというのは、ビジネスではすでに広く行われていますが、遺言書では初めてとなる大きな変化です。
10月からは、リモートでの作成もできるようになります。その場合は、本人の判断能力に問題はないか、誰かに言わされていないかなど、公証人が見極めることも必要になります。
公正証書遺言は、2024年の作成件数が12万8000件を超えて過去最多になりました。公証役場は全国280か所あまりにあります。必要な方は相談してみてください。、「相談は無料ですから、最寄りの公証役場に予約をして、気軽に訪れてほしい」と話していました。
Q:自分で書きたい、という人もいると思います。もう1つの自筆証書遺言のデジタル化とはどんなものでしょうか。
A:国の法制審議会が7月に中間試案を示しました。自筆証書遺言は、現在は本文をすべて自分で手書きすることが必要ですが、従来の紙の遺言書に加え、一定の条件の下でパソコンやスマホで作成する「デジタル遺言書」も認める案です。
ただしこの場合、本当に本人が作ったのか。そして誰かが書き換えていないかという偽造防止などが課題です。
中間試案では、2人以上の証人が立ち会って書面の内容を本人が読み上げる様子の録音や録画をすること、などを条件として上げています。ちなみに現在、もし自宅で封印された遺言書を見つけた場合、どうすればいいか分かりますか。
Q:すぐに開けて読んでみます。
A:ダメです。自分ですぐに開けてはいけないと定められています。
封をしたまま家庭裁判所へ持って行き、裁判官が内容を確認する「検認」という手続きが必要です。 自筆証書遺言は、すでに法務局で保管する仕組みがありますが、中間試案では、デジタル遺言書も公的機関で保管してもらう案が示されています。この場合、裁判所の「検認」は不要になるということです。
国の法制審議会は、今回の中間試案を元に今後、さらに議論を進めることにしています。実現はもう少し先になりそうですが、デジタル化でかえってトラブルが増えないよう十分な検討が求められます。
【残された人々へのメッセージ】
Q:自分で書く遺言書も、使いやすい制度になってほしいですね。
A:遺言と聞くと、身構える人もいるかもしれません。ただ、自分が亡くなった後、残された人たちが仲良くしてほしいというのは、誰もが願うことです。遺言書には財産だけでなく、家族への感謝の言葉を書く人も多いということです。
手書きでもデジタルでも、自分の思いを残す機会と考えても良いのではないでしょうか。
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昨年2024年は、約160万人の方々がお亡くなりになりました。日本はまさに多死化の時代に突入しましたね。
これまで、遺言書を書く人は10人に一人ほどの割合でした。遺言書がデジタル化され低コストで作成できるとなると、今後、増えていく可能性が高いと考えています。
これまでも伝えてきましたが、遺言書の付言事項という項目にデジタル自伝を添付することで、相続人同士の諍いやトラブルが減少していくものと確信しています。