滋賀県大津市にある「近江渡来人倶楽部」の代表で、「渡来人歴史館」の館長でもある河本行雄(河炳俊)氏の口述によって制作したデジタル自伝を、この度書籍にしました。
『近代の渡来人・落ちこぼれからの七転び八起き人生』のタイトルで出版し発売します。
一昨年の秋、河本行雄氏に対して聞き書きした内容を、ライフヒストリー良知のデジタル自伝として掲載、数多くの写真もアップしています。
生い立ちから今日までの生きざまを、これまで述べて来たように、福沢諭吉の『福翁自伝』の口述手法をモデルにし、勝海舟の父・勝小吉の自叙伝「夢酔独言」のように赤裸々に描いています。
口調や言い回しをそのまま「聞き書き言葉」で表現するなど、たいへん読みやすくしています。
全体の構成や書籍の編集については、チームを組んで行いました。
昨日、Amazonや楽天ブックスで紹介され、予約受付が始まり、7月からは書店でも販売します。価格は税込みで1,430円です。
この内容は以下のとおりです。
◆書籍の内容
在日コリアン二世、挫折からの出発。生きる糧を求め、生きる意味を模索して辿りついた「近代の渡来人として日本社会に貢献する」決意。75年の凸凹人生を綴る『近代の渡来人 落ちこぼれからの七転び八起き人生』。
私の家は農家住宅で、表の玄関を出ると日本人が住む通りだったが、裏口を出るとバラックの建物で朝鮮人部落があった。
(独立したものの)結局、先細りになって、それから女の子がスナックに勤めはじめて、私は“ひも”になってしまった。働くところもなく、ましてや借りた300万円も返せなくなってしまった。その時は失意の連続でしたね。
今、振り返るとやっぱり結婚が大きな人生の転機でしたね。先のことを考えていないチャランポランな落ちこぼれの若者が、結婚しようと本気に考えた。
そして子どもができて自力で生きる糧を求めて行動しなければと決意した。人生で初めて「志」を立てたということです。
私の渡来人に対する発想はこれです。
「いつ来たかは別として、日本に入り住みついたら日本人になる。すべて日本列島に到達した時期が違うだけの話だ。その中の利害を含めて日本のためにどうしたらいいかを主張し行動すべきである」と。
日本社会には多様な因子がある。それを考え、ひとつひとつ繋げていきながら生きていくことが大切で、これこそ「多文化共生社会」の原点だと思う。
私自身としては、日本社会を良くするための「日本社会の鳩時計」にならなければならないと強く思っている。
在日コリアンとして生まれた河炳俊(河本行雄)が、自らの出自と置かれた環境に目を向け、日本の社会で生き、経済活動や社会活動、あるいは本やテレビ番組、識者のお話や仲間との議論を経て辿りついた考えはこうです。
人類がアフリカ大陸を出発してはるかな旅(グレートジャーニー)を続け、その行き着いたところが日本であり、陸からまた海から渡ってきた人々の末裔が日本人である。
この結論に自分では腑に落ちた思いがして、その観点から渡来人歴史館のリニューアルを行いました。
渡来人という言葉は日本の古代国家形成期に朝鮮半島から日本に渡ってきた人々を指すものと理解しています。
現在、日本列島に永住する全ての人たちが渡来人であり、親の時代に朝鮮半島から日本にやってきた自分を「近代の渡来人」と位置付けることで、自分の立ち位置が定まったように感じています。
残された時間は限られていますが、家族、社員、在日コリアンをはじめとする海外出身の人々、そして日本の人々と一緒に、この愛する日本の社会が、世界からも尊敬されるような包容力のあるよりよき社会となるように微力を尽くすこと、
カッコよく言えば「忘己利他」が“人生の落とし前をつける”という自分の一番の幸せにつながると思いを新たにしています。
【目次】
第1章 誕生から幼少期
第2章 学生期
第3章 青春期
第4章 青年期
(経済活動)
不動産事業
パチンコ事業
森商事のこと
ゴルフ場開発事業
住宅地開発事業
(社会活動)
大津青年会議所(大津JC)
在日韓国民団滋賀県本部
第5章 壮年期
(社会活動)
近江渡来人倶楽部
(1)「在日コリアン(特別永住者)の21世紀展望」
①在日永住コリアンの将来を思う
②在日コリアンの20世紀
③在日コリアンの21世紀
(2)事業活動
①渡来人歴史館
②多文化共生支援センター
③ヒューマニティー・フォーラム
④おうみ多文化交流フェスティバル
⑤OTCマダン
⑥座談会
⑦活動年表
第6章 熟年期
第7章 後世に伝えたいこと
①再び小学校と青春時代
②志と運
③「日本社会の目覚まし時計」に
④忘己利他ー「思い」から「思いやり」へ
⑤近代の渡来人、ここに眠る
第8章 人生の記録と年表
①「四住期」と私の人生
アルバム
あとがき
★★
これまで私は、このサイトにおいて「なぜ、自伝や自分史を書くのか?」について述べてきました。また、
「なぜ、口述や聞き書きで進めていくのか?」
「自伝を制作することで顧客はどんなメリットが得られるのか?」
「なぜ、デジタルと書籍の二層にすべきなのか?」「顧客が自伝を後世に残す意味や意義は何か?」
などについても論じてきました。
今回、この河本行雄氏の自伝を制作する過程で経験したことを基に、改めてこれらについて解説していきます。