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回想法

高齢者の認知症を予防するための方法のひとつに「回想法」というものがあります。私は現在、高齢者施設でのお年寄りの方々との関わりの中で、この「回想法」を現場で推進しています。

現在、高齢者施設の入所されている人たちは、大正生まれから昭和ひとケタ生まれの方が多い。戦争に従軍した人、戦争で身内を亡くした人、戦争によって自分の人生に大きな影響を受けた人ばかりです。

ほとんどの人が戦争に対する悪しきイメージを持っています。

戦前、朝鮮半島や満州(今の中国東北地方)は日本の統治下にありました。その地に住み仕事や生活を通じて、いろいろな経験をされた人たちの多さにびっくりしますね。私は、当時の写真や映像を使い、また様々な質問をしながら、少しでも高齢者の皆さんの脳に記銘されているその時の記憶を呼び起こしてもらおうとしています。

アメリカとの戦争が終わった後、ソ連軍によってシベリアに連れられ2年間抑留され運よく生還されたAさんは、現在93歳。認知の機能に多少の衰えはあるものの、とても元気で明るい。

「とにかく、相手の言うことをふんふん聞いたわ。そやから生きて帰れたんや。少しでも抵抗した奴らはな、みんな殺されよったわ。」

とにこにこしながら話されます。

今の北朝鮮の首都平壌にあった航空隊の一兵卒として終戦を迎えたBさんは、すぐさま駐屯してきたソ連軍によってシベリアに送られました。その当時の凄まじい体験を興味深く聴きながら、強烈に残っている話があります。

「シベリアではな、カンさん、トラとかオオカミに襲われて死んだもんもぎょうさんおったわ。こんなこと、みんな知らへん。ゆうてへんのや。そら、怖かったで。」

昔のことを思い出したり回想するということは、決して思い出したくないような出来事も頭の中をかすめていくので、必ずしもいいことばかりではないのかもしれません。しかし、そんな体験も「自分の人生の一ページだった」と達観して考える人が多いのも実際のところです。

回想法で大切なのは、やはり聞く力。そのためのある程度の歴史に対する知識が必要です。それにその人に対する関心、さらには創造力と想像力を持つことですね。それらがないと話が続かず、聞き手にとっても「回想法」そのものが面白くありませんからね。

記録に書き留めると、その「記録集」や「思い出集」はその人のとても大切な宝物になります。

これは、確信を持って言えることです。

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