私たちは過去をどう感じるのでしょうか? これは過去に満足したこと、誇りに思ったこと、楽しかったこと、うれしかったこと、つらかったこと、苦しかったこと、悲しかったこと、恥ずかしかったことなどをどう記憶するかにかかってきます。記憶の他に情報源はありませんからね。
人間は、これまでか弱いながらも、ネガティブな感情を消し去り、ポジティブな感情を育て、築き上げ、持続させようと進化してきました。もし、自分にすさんだ心が生じているなら、この心を立て直す唯一の方法は自分の過去を書き直すこと、つまり嫌な記憶を忘れ、抑制し、考え方や解釈をポジティブに変えることです。
しかしながら、過去を抑制しようとして無理をすると却って反発し、そのイメージが過剰になっていくことがあります。忘れることも抑えることもできないのなら、残るのはそれを認め受け入れる以外にないのです。
だったら、どうすれば容認できるのでしょうか。
アメリカの心理学者エベット・ワーシントン博士は次のように「REACH(リーチ)」というものを提唱しています。
Rは、recall(思い出すこと)。これをできるだけ客観的に行い、出来事を思い出すときは深くゆっくりと静かに呼吸すること。
Eは、empathize(感情移入すること)。なぜ過去の出来事が良くないことばかりで、それに関わった人間が自分を傷つけたのか理解してみること。
Aは、altruistic(利他的になること)。過去に自分がルール違反をし、罪悪感を抱き、それを許されたときのことを考えてみる。その時、許されたことに感謝すること。
Cは、commit(表明すること)。過去の出来事を日記に書いたり、信頼できる友人に手紙を書いたり、カウンセラーに話を聴いてもらったり、すること。
Hは、hold(持続すること)。過去の出来事の記憶は必ず蘇る。容認とは消し去ることではなく、解釈とかイメージを変えること。後悔心を抱いて記憶に留めてはいけないし、記憶に浸ってもいけない。
このREACHのアプローチ方法で実証した結果によると、怒りやストレスが減り、楽観性が増し、健康的になり、容認の度合いが大きくとなった言います。
過去にどんなつらいことがあってもそれを容認し、ポジティブに解釈を変えることによって、『過去は変えられない』というこれまで私たちが抱いていた常識は、はるか彼方に飛んでいくのでしょう。