ライフヒストリー良知

ライフヒストリーブログ

読む技術と記憶戦略

私たち人間の創造力の基盤は言語ですね。人間は言語で思考し言語でその考えを発信していきます。 聖書の「ヨハネの福音書(1-1)」でも、“初めにことばがあった。ことばは神とともにあった”と謳っていますね。

あらゆるものが言葉を通して伝えられます。どんなに進んだ社会でも人間の創造力は常に、言語運用能力から生まれます。その基盤となるのは言うまでもなく第一言語である日本語ですよね。

言語には、「読む」「書く」「聞く」「話す」があります。この中で「書く」というのはもっとも技能の高いレベルです。「話す」というのは自然に身につくものですが、飽きさせずに話し続けるにはそれ相応の技術が必要です。「聞く」という技能は、「聞き上手」という言葉があるように上手下手がはっきり表れ、インタビューやカウンセラーのように聞くことを専門にしている職業があるくらい技術が要ります。

そんな中で「読む」というのは、漢字と語彙がわかれば自然に読めるので、技能や訓練がさほど必要でないと思われていますね。『「読む」のに技術が必要か』という命題に答えているのが、国語学者の石黒圭さんで、ここからは石黒さんの本を参考にしながら、「読む」技術について、また記憶との関係性について考えていきたいと思います。

石黒さんは、『「読む」という行為には、目的に応じた数多くの種類がある』と言います。声に出して読む「音読」、声に出さずに読む「黙読」、早く読んで要点をつかむ「速読」、ゆっくり読んで理解する「精読」があります。「速読」と「精読」の中間にあるのが「平読」、あるいは味わいながら読むという意味で「味読」とも呼んでいます。 この中で「精読」についてお話していきます。

石黒さんは、本を読む時には、読む目的に基づいたストラテジー(戦略、あるいは作戦計画)があると言います。「精読」する場合に、3つのストラテジー、すなわち「行間ストラテジー」「解釈ストラテジー」そして「記憶ストラテジー」。

「行間ストラテジー」とは、書かれている内容をヒントにその行間を背景知識から推論していく技術です。いわゆる“行間を読む”行為のことですね。「解釈ストラテジー」とは、さらに踏み込んで多様な解釈を生み出す技術で、読み手によって文章に新たな価値を付与していきます。

一方、「記憶ストラテジー」とは、本の中の情報を脳内に固定・貯蔵させる技術です。そのためには次のような行いが大切です。 ①繰り返し読んで文章の構造を把握する。 ②音読して文字と意味、音と意味のつながりを知る。 ③自分の言葉に置き換えて理解する。 ④要約によってアウトラインを押さえる。⑤文章との対話を心がけ内容を関連付けて理解する。

特にこの「記憶ストラテジー」は重要なポイントです。良書は心して熟読し、脳に記憶して残していきたいものです。

%e3%83%90%e3%82%b9%e3%82%b1%e3%83%83%e3%83%88%e3%82%b4%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%81%a8%e9%9d%92%e7%a9%ba