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海馬と偏桃体

これまで、このブログで記憶のことをいろいろ書いてきました。 記憶には「短期記憶」と「長期記憶」があります。しばらくするとすぐ忘れてしまうのが「短期記憶」で、ほぼ永久的に覚えていられる記憶が「長期記憶」です。この中で「海馬」と「偏桃体」について次のように解説したいと思います。

すべての記憶はいったん脳の奥にある「海馬」の部位に保存される。これが「短期記憶」で「海馬」内で情報の取捨選択が行われ、これはずーっと覚えておかなければならない記憶だと判断された記憶は「大脳新皮質」に送られる。

海馬がどのようにして長期記憶を決定しているか、あまりよくわかっていない。しかし、近年の脳科学の研究で、「偏桃体(へんとうたい)」という直径1㎝位の形をした器官が「海馬」と影響し合っていることが明らかになっている。

「偏桃体」は、大脳皮質の内側にある大脳辺縁系の下の方に位置しており、快不快を判断するのが主な役割。私たちが見たり、聞いたり、臭いをかいたり、触ったり、味を味わったりした時に得た感覚情報は、大脳皮質から「偏桃体」に伝わり、好き嫌いが判断される。

「偏桃体」は「海馬」の隣にあり、好き嫌いや快不快の感情を「海馬」に伝える。そのため、心を大きく揺さぶるような出来事は、いつまでも記憶に留められている。記憶は、情緒や感情の働きに影響されていることが、脳の働きの面からも説明できるようになった。

「偏桃体」は、情緒に深く関わるだけでなく、社会性にも関係が深いことがわかってきた。社会性とは、人の顔を区別したり、表情を読み取るなどの認知能力のこと。

「偏桃体」が傷つくと孤立するなど、社会生活がうまくいかなくなることが確認されている。 好き嫌いなどの情動の働きと社会的な適応能力が、同じ脳の器官で司られているのはおもしろいことですね。

「長期記憶」に関わる大脳辺縁系の「海馬」と「偏桃体」、それに大脳皮質が相互に影響しあっているということは、潜在的な記憶能力を全開するうえで大きなヒントになりそうですよ。

本55