記憶の再構成ということについて、有名な実験があります。
それは、図形を見せてその形を覚えさせ、後に思い出させるという単純なものです。記憶時にそれぞれの図形の名前を与え、そうしたラベリングが後の記憶の再生にどのような効果をもつかを検討したものです。
その結果、図形という物理的刺激を記憶する際にも、図形の名前というラベルの影響を強く受けることがわかりました。図形を思い出す際にも、その図形の意味を頼りに思い出そうとするために、想起の歪みが生じることも証明されています。
実験の内容はここでは省きますが、私たちが何かを思い出すときは、記憶内容に何らかの意味付けをして想起する傾向があり、その意味付けの方向によって想起内容が歪んでいくものなのです。
単純な図形を思い出すときでさえ、いろいろな歪みが生じるものです。ましてやいろいろな思いが込ねめられている日常生活の出来事を想起する際には、意味付けによる想起の歪みは相当なものになると、私たちは常に考えていかなければならない。
言いかえれば、「記憶とは、作り直されるもの、再構成されるもの」といことなのですね。