ライフヒストリー良知

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訊く力

口述自伝(ライフヒストリーブック)の作成において、話者であるお客さまからの話を聴く際に、ライフヒストリアンは、“訊く力”をしっかり持たなければならないと肝に銘じています。

訊くことは、お客様の記憶を蘇らせことにほかなりません。年齢を重ねていくと、エピソード記憶がとぎれとぎれになり、断片的なことしか思い出せない。本来、そのことが物語として脳の中に残っているはずなのに、忘れ去ってしまっていますね。

それを“訊く力”によって、きっかけやヒントを与え、海底に沈んでいた「記憶の島」の数々をつなぎ合わせ地続きにし、「記憶の大陸」として物語を再現していきます。言いかえれば、訊くというのは、「記憶の島」を浮かび上がらせるために海面の水位を少しずつ低下させていく行為であると言えるのです。

では、訊く力、能力とはいったどのようなものでしょうか?

まず、お客様に共感しながら、心の中を慮って、過去の記憶を引き出していくためのインタビューを行える技術ですね。ライフヒストリアンは予めお客様の生活状況の概要を確認し、当時の時代背景や社会情勢を掴み、知識として持っておかなければなりません。

心理学的な傾聴力も大切ですね。

そして、最も必要とされるのは、ライフヒストリアンの「教養や人生観、人間的魅力」だと思います。これがなければ、どんなに知識が豊富で優れた傾聴力があっても、インタビューは成功しません。

“ライフヒストリー良知”は、この“訊く力”に重きを置いているのです。

彼岸花