行動遺伝学という学問があります。慶応大学文学部の安藤寿康(じゅこう)教授がこの分野の第一人者で「遺伝子の不都合な真実」など何冊が本を書いています。安藤教授がこの研究から導きだしたのがあらゆる行動は遺伝的であると言うことです。
もちろん相対的には非遺伝、つまり環境の影響のほうが強く、遺伝は言語以外はほとんど半分以下ですが、それでも無視できない数字であることは確かですね。
この場合、環境は共有環境と非共有環境の2通りがあって、共有環境、つまり親の子育ての環境の影響は極めて少なく、大半が非共有環境、つまり指導者や友達など外部の人たちからもたらされた影響だと言うのです。子育てにお金をかけてもあまり意味がないのだと。
では、自分の遺伝的才能を発見するためにはどのようにすべきなのでしょうか。
それは、その人の日々の生活や経験のなかにヒントがありそうです。『隠されている未知の発見というよりも、すでに持っているもの、表れているものの中にある才能や天賦に気づき、それを使える状態にしていくことだ』と安藤教授は言います。
『ひとたび遺伝的才能の芽が見いだせれば、おそらくその才能がやるべき課題を自ずと導いてくれる』とも。
自分で気づくというのはなかなか難しい。そんな時は周りの人に素直に聴くことですね。そして両親や祖父母、或いは遠く先祖を遡ってその性格や行動様式を確認することでしょう。
さらに言えば、人が生きる過程でその時々の行動や心の働きを記述し、それを後世に遺すことによって遺伝的な影響を子孫に伝えることができれば、彼らにとってみればとても大きな福音となりますね。
ライフヒストリー良知の役割はそこにあるとも言えるのです。