記憶の研究の進化
記憶の研究を始めてから4年近くなります。
記憶というものが脳の中でどんな働きをしているのか、まだまだ不明なことはたくさんあるけど、少しづつ明らかになってきましたね。
17世紀、フランスの哲学者でルネ・デカルトという人がいました。
「我思う。ゆえに我あり」
という、たいへん有名な言葉を遺しています。
ところが、科学の世界では、20世紀以降、この言葉は誤りだというのが常識になっていますね。
デカルトは、「心と身体から分離していると主張しているけど、現代の科学者は、「心のすべての活動は、私たちの脳から生じている」と言います。著名なアメリカの神経学者のダマジオは、「我あり。ゆえに我思う」と言い換えた方が正解だと言っていますね。
もうひとつ。「私たちは単に考えるから、私なのではなく、考えてきたことを思い出すことができるからこそ、私なのだ。」と言うのです。自分たちが思うこと、話す言葉やその振る舞い、実際に、私たちの自意識や他人とのつながりは、すべて私たちの記憶、つまり脳が私たちの経験を記憶し、保存するという能力に依存していますね。
記憶は、
私たちの精神生活を結びつける糊のようなもの。
個人史を保存するもの。
生涯を通じて成長するもの。
変化することを可能にする足場。
アルツハイマー病のように、記憶が失われると、私たちは過去を再現する能力を失い、自分自身や他者とのつながりを失ってしまいます。これまで私は、そんな人たちをたくさん見てきました。
今、記憶の研究にはふたつの潮流があると言います。
ひとつは、脳のニューロン(神経細胞)が相互にシグナルを送ることを明らかにする生物学的な研究。
もうひとつは、脳のシステムと認知に関する心理学的な研究。
記憶は単一のものではないこと。要するに、このふたつ、脳と心理の相互作用なのです。
私は、ライフヒストリー良知の事業を通じて、その人の脳に記銘されているその人の歴史の記憶を引き出すことが、その人の記憶の劣化を防ぐ最大の方法であることを証明していきたいと思っているのですよ。