今、ある団体の年史を編纂する事業に取り組んでいます。
この1ケ月、この団体のリーダーの人をはじめ、いろんな役職に就いている人たちや、かってここに深く関わっていた人たちにインタビューし、レコーダに録音、音声認証機能を使って文字起こしをしています。
話し手に気持ち良く的確に語ってもらうため、事前に下調べして質問する事項をしっかり準備しておく必要がありますね。そうとはいえ、脱線することもしばしば。なにせ複数の〈語り手〉ですから。
歴史資料の作成のため、関係者から直接話を聴き取り、記録としてまとめることを〈オーラルヒストリー〉と言います。これが個人の歴史になると〈ライフストーリー〉、自伝として制作するなら〈ライフヒストリー〉。
また、民俗学では〈聞き書き〉、医療や介護の世界では〈回想法〉とか〈ライフレビュー〉と言っていますが、意味ややるべきことはほぼ同じですね。
私は、今回、自伝制作でないので、〈ライフヒストリアン〉ではなく、〈オーラルヒストリアン〉としての職務を全うしなければならない。
オーラルヒストリーの教科書にしているのは、ポール・トンプソンというイギリスの社会学者が書いた『記憶から歴史へ』という本。なかなか分厚いもので、正直読むのはたいへんですが、私が求めていることが随所に散りばめられていますね。
〈オーラルヒストリアン〉は、どこでもインタビューに行きますよ。人生経験が豊かで専門的なことをよく知っている人たちの足元に座るのです。
たくさんの〈語り手〉から話を聞いて、文字にして書き残されたものは、後世に生きる人たちにはかり知れない勇気と価値とを与えていきますね。その時〈語り手〉は、それを誇りを思うのです。