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ライフヒストリアンの腕

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自伝は、云わば自分の生きてきた、或いは生きている証明ですね。自伝は、自分の生きてきた道を誰かに伝えたい気持ちが多い時にペンを持ち、口述自伝なら、聴き手に語る。

ところで、先日新聞記者をしていた友人から、新聞記事の文章表現の原則は何かについて話を聞いた。彼は、「正確」「簡潔」「平易」「達意」の4つの要素だと言う。「達意」とは読者にやさしく理解できる表現のこと。

短く、やさしく、正しく。これを基にするなら自伝を書くのは難しい。自伝の文章表現には自由奔放さが必要なのです。自伝は正確さがなくてもいい。記憶を辿るので思い違いやエラーがつきもの。平易簡潔なども考えなくてもいい。読む人のことをあまり考えすぎると何も書けなくなる。

これは、口述自伝でも同じ。聞き手に対し自由奔放に語ることが大切なんですよ。記憶に不正確さがあっていい。言葉が曖昧でもいい。方言が多い方がいい。語り手の言い回しや口調をいかに文章にして表現するか、ここにライフヒストリアンの腕が試されるのです。