偉人たちが老齢期に何を考え、どんな生き方をしてきたのか?
宮本武蔵について、当初僕は剣の道一筋の男と思っていたけれど、実は60歳になって、有名な「五輪書」を執筆し始め、2年後に書き上げています。剣豪でならした武蔵は晩年になってもその衰えない克己心で天下の兵法書を書き著したのですね。
また。死が近づいてきたとき、気力を振り絞って、21条に及ぶ「独行道」という書を認(したた)めました。
宮本武蔵が死に臨んで何を考えたのでしょうか? これを読むとよくわかりますね。現代訳にすると、
一、世の中のさまざまな道に背いてはならない。
一、わが身の楽しみを追い求めてはならない。
一、どんなことにもそれをたのみにする心を抱いてはならない。
一、自分中心の心を捨て、むしろ世の中のことを深く考えるように。
一、一生の間、欲深いことを考えてはならない。
一、一度したことについては後悔をしてはならない。
一、他人の善悪について嫉妬してはならない。
一、いかなる道についても(おそらく人生、つまり愛する人との別れ、あるいは肉親の死なども含めて)、別れを悲しんではならない。
一、自分のことについても他人のことについても、不平を言ったり嘆いたりしない。
一、恋愛には感心を抱くな。
一、物事に好き嫌いを持ってはならない。
一、自宅を豪華にしようという心を持ってはならない。
一、常に身一つ簡素にして、美食を好んではならない。
一、代々伝えていくような骨董品を持ってはならない。
一、体にこたえるような飲食、つまり暴飲暴食や無謀な行動をしてはなはらい。
一、武具については特別な物を好んではならない。
一、自分の道を貫くためには、場合によっては死に向かうこともあるが、それを避けてはならない。一、財産を貯えたり宝を持ったりしてはならない。
一、仏や神は貴いけれども、これを頼りにしてはならない。
一、自分の命が危険にさらされても、名誉心を失ってはならない。
一、常に兵法の道から離れてはならない。
武蔵が絵を描いていたなんてちょっと信じられない。「枯木鳴鵙図」という絵。この絵を直接見たわけでははいけれど、ネットで見る限りとても伸びやかで趣や風韻がありますね。
老年期に絵を描くことは、手や指を動かし創造力を高めるため脳の活性化にはとてもいいこと。高齢者施設でも書画や絵画、貼絵に取り組まれている方は、総じて認知の低下がみられず、みなさんとても生き生きと集中して創作されていますよ。
私も、老年期に書や絵に関心を持ち、自ら筆やハサミを携えて、宮本武蔵のように無心になって描きあげていきたいと思っているのです。