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勝小吉の夢酔独言

勝小吉の夢酔独言

幕末に西郷隆盛と話し合って江戸城を無血で開城させ、江戸の町を戦禍から救ったのが有名な勝海舟ですね。

その海舟のお父さんが勝小吉という人なんですが、小吉は江戸弁丸出しの話し言葉をそのまま書き言葉にした「夢酔独言」という自伝を書いています。

小吉は喧嘩沙汰を繰り返したり、吉原に入り浸りになったり、物乞いのような生活をしたり、放蕩者で無頼漢。そんな小吉が、なぜ自伝を書こうと思ったのか。

小吉は、「孫やひ孫ができたら、おれみたいになるなよと言い聞かせ、戒めにするがいい。そのために自分がやったことをすべて書き遺しておくから」と海舟をはじめ身内の者に伝えたと言います。

「おれの血を幾らか受け継いでいるのだから、おれのようなとんでもない愚行をやりださないという保証はない。おれはこんな生き方しかできなかったが子孫にはまっとうに生きて欲しい。」という小吉の願いが込められ赤裸々に自分の体験を語り綴ったのでしょう。

これは凄く勇気のいることですよね。

僕は、高齢のお客さんに「自分の生き様を後世に伝えましょう、子々孫々まで遺しましょう」と話をするのだけど、実際子々孫々に伝え遺すという、いわば「家系の連続性」といったものに対してなかなか実感できず理解してもらうことが難しい。

また、「自分の失敗や挫折した経験は衣を着せずそのまま伝えることが大事ですよ」と言うと、一応理解はしてもらうものの、いざ文章にして遺すとなるとやはり躊躇される方がほとんどなんですね。

これまで『東洋には自伝なし、自伝はヨーロッパ特有の文化』と言われて来ました。『夢酔独言』のような生き生きとした自伝は、有名な福沢諭吉の『福翁自伝』くらいなもので、他にはあまり見当たらない。

今般、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんから、誕生/幼年時代/学生時代/青年時代/壮年時代/老年時代の6つのカテゴリーに分けて聴き取った人生の歴史や物語を『聞き書き言葉(その人の口調や言い回し、方言などをそのまま表現する方法)』で文章化し、併せて年表も作成して、パスワードを入れれば子や孫たちがパソコンやスマホでいつでもその内容が見られるシステムをIT企業と共同で作りました。。

日本において自伝やライフヒストリー(口述自伝)が文化として定着するよう、少しでも力になればと思っているのです。

https://life-history.jp/