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老いの思想

安西篤子という作家が『老いの思想』という本を書いています。その最後の章で「日本人は老いとどう向きあってきたか」という題名で、民俗学者宮本常一の有名な著書「家郷の訓(おしえ)」のことに触れています。

宮本常一は1907年生まれで山口県出身。小学校の教師を経て民俗学者になった。

当時の老人達の日常はどんなものであったか、宮本は克明に書いています。

男は還暦を過ぎると隠居する。隠居したからといって楽をするのではない。男は主に野菜を作る菜園の手入れをする。その他むしろ織り、こも編み、ぞうり作りも老人の役目。農繁期は田畑にも出る。女は苧積み(おうみ)をして小遣いをかせぐ。

もっとも大切な役割が子守り。若い働き手の母親は重要な働き手。農作業の間、老人が子供の世話をします。

宮本常一も祖父がオイコに乗せて田や畑に連れて行った。祖父が喜ぶ、祖父と孫の情愛がよく感じられますね。祖父は昔話をたくさん知っていた。昼間、山で働いて戻ってくると、必ず夜は、孫に肩叩きや足揉みをさせる。その代わりに祖父は昔話をするんですね。

祖父母と孫の間柄は、今よりも親密で暖かい。体温の高い幼児は、抱いて寝る老人を心地よく温めたに違いありませんね。
当時と今と比べて、今の高齢者の方が恵まれているでしょう。だけど、今の方が幸せかと言うと、さて、どうでしょうね。

(続く)