これまで、数多くの中高齢者の方々と接して、その人のライフヒストリー(人生の歴史)はなかなか変えられなけれど、ライフストーリー(自己物語)は変えることができると思っています。
『自分の人生って何だろう』とか、『これまで何のために生きてきたんだろう』という問いに対して、ひとりで考えるのではなく良き聴き手の存在が不可欠です。良き聴き手がいれば、これまで作り上げてきたストーリーを自分が納得するまで書き直したり修正したり、その意味付けを変えたりすることで新しいライフヒストリーに仕上げていくことが可能ですね。
大切なのは、そのストーリーが聴き手にとってもある程度納得するものでなければならない。そうでなければまったく非現実的で歪んだ妄想になってしまいます。聴き手の共感がなければストーリーはその人だけの思い込みに終わってしまいます。そのためにも、良き聴き手を得て充分に語り尽くすことが必要で、このプロセスを経て、ライフストーリーは書き直されていくのです。
また、その人がストーリーを語るとき、その人の記憶のストックの中からどれを思い出し引き出していくかは、聴き手の反応を見て判断されることが多々あります。反応を見ながら、これは良くないと感じたら話を内容を変更したり、口調を変えられたりします。逆に聴き手の反応がいいな思ったら、自信を持っていきいきと語られることが多いのです。
人は良き聴き手を必要とする。その聴き手によってライフストーリーが良きものに書き直され、それがその人のライフヒストリーとなる。これは確信をもって言えますね。