毎日のように認知症の話がテレビや新聞に出ていますね。
国の発表では、認知症を抱える人は全国で約420万人。団塊の世代がすべて後期高齢者になる2025年には700万人を超えると言われていますね。もはや国民病と言っても過言ではないと思いますよ。
認知症とは、要するに脳の機能が障害されることに他なりません。アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型の4つ。これら認知症の症状などは、メディアなどで紹介されているためここでは取り上げませんが、ひとつだけ、佐藤眞一さんという大阪大学の先生が書いている本がたいへん興味深いのでお話しします。
佐藤さんのテーマは『認知症を心理学や人間行動学の観点から見ていく、つまり認知症の人の心と行動のしくみを知ること』。
心理学にはたくさんの分野があります。それほど心とは複雑なものです。佐藤さんは、心というものを①脳の機能としての「個人の心」、②周囲の人や組織などの「社会的関係における心」、言い換えれば「人と人との関係から生まれる心」、③受胎から死までという「時の流れにおける心」、つまり、青年期と老年期では同じ人が同じものを見ても違う感じ方をすることの3つの捉え方をしています。
この考え方は認知症にも当てはまると言います。例えば「徘徊」。これは、①脳の機能の異常が生じたために出る症状、②介護する人が悩まされる病気、③その人の中では、若いころの自分に戻っているために、その頃に住んでいた故郷の家に帰ろうとしているという見方があるのだと。
表に現れた同じ「徘徊」でも、その人の置かれた環境や背負っている人生を理解しないとその意味がわからないことが多いですね。
介護する者はその認識が必要なのですよ。