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心の時計を巻き戻す実験

アメリカハーバード大学の心理学の教授にエレン・ランガ―さんという方がいます。この先生が1979年に「心の時計を巻き戻すと、体にはどんな影響があるのか」という実験をしました。

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参加者は、全部で16名。すべて75歳から85歳の高齢者。それぞれ8人ずつ二つのグループに分ける。ひとつを「実験群」、もうひとつを「統制群」と呼ぶ。この実験で1959年を再現する。参加者は1959年の世界で暮らし、20歳若返ったつもりで行動する。場所はニューハンプシャー州ピーターボロにある修道院。その一部を改修し1959年の世界を完璧に再現する。

実験群の参加者は、1959年に戻ったつもりで1週間を過ごす。どんな会話や討論もすべて現在形で話すようにする。過去形を使って話してはいけない。今が1959年のつもりで短い自伝を書き、当時の自分の写真も一緒に提出する。

実験群の合宿が終わると、次に統制群の合宿を始める。統制群もすることは同じだが彼らの自伝は過去形で書かれていて、写真も今の自分の写真だ。合宿所に入ってからは、過去の思い出話に花を咲かせることになるので、今が1959年でないことをいやでも意識することになる。

合宿所での生活が始まると、参加者に毎日集まってもらい、最近の出来事について話し合うようにしていた。例えば、1958年にアメリカで初めて人工衛星の打ち上げに成功したときのことは、「去年」の出来事として語られる。他には、キューバのカストロがハバナに侵攻した事、1959年のスーパーボウルでコルツがジャイアンツを下した試合、「007ゴールドフィンガー」「栄光への脱出」などの本、ペリー・コモやローズマリー・クルーニーなどの音楽、「ベンハー」や「お熱いのがお好き」の映画の話題。

さて、結果は。実験群も統制群も予定の1週間が終わる前から、態度や行動に変化が見られた。参加者の全員が、食事の準備や後片付けに積極的に関わるようになった。終わってからすべての参加者にテストを受けてもらい、その結果、心の持ちようが体の状態にとても大きな影響を与えることがはっきりとわかった。

多くの測定基準で参加者は「若返った」。実験群の参加者は関節の柔軟性が大きく向上した。知能テストでは実験群の63%が成績が向上し、統制群は44%だった。また身長、体重、歩行、姿勢でも向上が見られた。

最後に、この実験の目的を知らない第三者に合宿の前に提出された参加者の写真と合宿後に撮影された参加者の写真を見比べてもらった。すると、実験群の全員について実験群のほうがずっと若く見えると答えたのだ。

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ランガ―教授は、この結果を見て考え方が大きく変わったと言っています。『年齢や病気といった生理的な限界は、逆らえない運命ではないと信じるようになった。私たちの限界を決めているのは、肉体そのものではなく、むしろ頭の中身のほうだ。「もう年だからできない」「病気だからできない」と勝手に決めつけてしまっているだけなんだ』と。

私もランガ―教授の考え方に賛同します。私たちに必要なのは、もっと「心」を重視した健康法ですね。つまり自分の健康について頭の中で限界を決めてしまわないようにすることなのでしょう。

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