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記憶の成り立ち

ジュリア・ショウというロンドンサウスバンク大学法社会学部の上級講師で、感情的な出来事を経験した時に起こる記憶エラーである「過誤記憶」を研究する世界でも数少ない美しい女性研究者がいます。彼女が最近書いた『脳はなぜ都合よく記憶するのか(記憶科学が教える脳と人間の不思議)』の書籍が日本語に翻訳されたので買って熟読しています。

最新の脳や記憶の研究の成果がたくさん散りばめられ、たいへん興味深い内容となっていますね。この中には私たちの事業と深い関係がある研究もあり、幾つか書き記したいと思います。

『脳には860臆個のニューロン(脳神経細胞)が存在する。』『記憶とは新しい脳神経細胞を作ることでなく、既存の脳神経細胞を結び付け調整すること』『記憶形成に重要なのは何よりもシナプス(ニューロン間のすきま)だ。』

【ある教授がシナプスとそれに関係する細胞の概念を次のような方法で説明した。「私はニューロンです」と教授。それから両腕を横に伸ばし、体でTの字を表した。「これが樹状突起」とそれまで握っていた拳(こぶし)を開き指をひらひらさせた。「これが棘」学生を呼び出し、彼らを自分の横に立たせると、まったく同じ姿勢を取らせた。そして自分の指先を隣に立つ学生の指先に近づかせ、その間にわずかな空間を作った。「それからこれがシナプス」最後に隣の学生の手を取って振ることで、電気インパルスがニューロンを通り、隣の学生のニューロンに伝わっていく様子を表した。】

『長期増強とはシナプスの強化により、ニューロンの結合をより強くするプロセスのことだ』

『南カリフォルニア大学のマイケル・ボードリーのチームは脳内のたんぱく質を刺激しシナプスを記憶にかかわる長く続く変化に耐えさせるために必要となるものがカルパインと呼ばれるカルシウムだ。』『カルパインは記憶細胞の間の結合をより強くする。』

『ノーベル生理学・医学賞の受賞者で記憶研究の先駆者であるエリック・カンデルは、「長期記憶を形成するシナプスを安定させるたんぱく質がプリオンで、長期増強とカルパインの流入がすでに起こしている物理的変化に永続性を加える」ことを発表した。』『カルパインが情報伝達の流れを計画する、いわばシナプスの設計者なら、プリオンは変化をより永続的なものにする建設作業員だ。』

『記憶は思い出すたびに効率よく検索され、吟味されると、また一から作り直され、再び貯蔵される。検索カードをファイリングするのと同じで、一枚引き出して読んだらゴミ箱に入れ、その内容をファイリング用の新しいカードにもう一度書き直すのだ。どんな記憶であれ、思い出すたびにこうしている。』

『アイオア州立大学の研究者ジェイソン・チャンとジェシカ・ラパーリアは「被験者が長期記憶に貯蔵した経験を想起するたび、この符号化と貯蔵のサイクルが繰り返されることを立証した。』『この研究では面談を行っただけだった。』

これらの研究の流れから、顧客に会い質問し新しい情報を入れることで、長期的に符号化されている脳内の記憶を構成し直すことができるのです。

つまり、“ライフヒストリー良知”の事業は、このように顧客のマイナスの自伝的記憶をプラスに変えていく可能性を秘めているのです。

彼岸花