この10月はまさしく「選挙の季節」となり、有権者はどの政権を選択するか問われますね。小池百合子東京都知事が「希望の党」という新しい政党を立ち挙げましたが、果たして結果はどうなるのでしょうか?
さて、先日小池さんの答弁のなかで「アウフ・ヘーベン」という言葉が出てきましたが、どういう意味なんでしょうか?日本語に訳すると「止揚」。これはドイツの哲学者ゲオルク・ヘーゲルの「弁証法」の思想ですね。「弁証法」とは人類が生み出した哲学の中でも、最高峰と言われています。私は、以前からこの弁証法に関心がありいろいろ学んきたのでご紹介します。
簡単に言えば「対話の方法」。この弁証法を用いたことで有名なのは、古代ギリシアの哲学者ソクラテスです。あのソクラテスの弁明などでよく知られています。ソクラテスは真理を探し出す方法として「対話」を重視しました。「対話」を通して、お互いの思考を深め、真理に到達する方法としてこの「弁証法」を用いたのです。
対話の方法は、「討論(ディべート)」や「議論(ディスカッション)」などがありますが、「弁証法」はまったく異なった方法ですね。「討論」は異なった意見の持っている者が議論し、どちらの自己主張が正しいか決める方法です。また「議論」は、異なった意見の持ち主が集まり、語り合うことによっていろいろな意見を学ぶとい方法です。
これに対して、「弁証法」は、異なった意見や対立した意見を持っている者が対話を行うことで、より深い思考に向かっていく方法です。ヘーゲルは、「正」「反」「合」による思考の深化が大事だといいます。つまり、「正(テーゼ)」、「反(アンチテーゼ)」、「合(ジンテーゼ)」という過程を経て思考を深めていくのです。
ひとつの意見「正」に対して、もうひとつの反対意見「反」があり、それぞれが対話を通じて、ふたりが共にこのふたつの意見を統合し、アウフ・ヘーベン(止揚)して、より深い理解「合」に到達するという方法なのです。
もちろん、それぞれが共感しながら最後までしっかり話や意見を聞くというプロセスが大切になりますが、これが会社の人間関係や、夫婦・親子関係などさまざまな分野で活用できる対話の方法であるのは間違いありません。政治の世界は特に。
小池さんが、この弁証法を熟知しているのなら、政権党にとってかなり手ごわい相手になりそうですね。