ライフヒストリー良知

ライフヒストリーブログ

記憶を呼び戻す

仕事柄、記憶のことに関心を寄せいろいろ研究しています。何故なら『ライフヒストリー良知』のコンセプトが「記憶を呼び起こすこと」にほかならないからです。これまで数多くの高齢者や認知症の人と接し、人にとって記憶がいかに大事か肌で感じています。

記憶は、記銘(覚える)⇒保存(覚えておく)⇒想起(思い出す)⇒忘却(忘れる)の過程があります。そして感覚記憶⇒ワークングメモリー(作業記憶)⇒短期記憶⇒長期記憶(意味記憶・エピソード記憶・手続きの記憶)と幾つもの段階を経ていきます。段階ごとそれぞれ使われる脳の部位が異なるのです。「感覚記憶」は目や耳、皮膚から入りますがすぐ消えます。「ワーキングメモリー」はこの前頭葉でキャッチしますが持続しません。「短期記憶」も記憶の部位で有名な海馬で受け止めせいぜい2,3ケが月しか保存できませんね。海馬の機能が不全になると記憶は想起できなくなります。アルツハイマー型の認知症の人はこの海馬がやられています。

「長期記憶」の中で、その年代に何が起きたかとか、その場所はどこにあったとかといったことを覚えている「意味記憶」があり、どんな経験をしたかという「エピソード記憶」があります。そしていわゆる体で覚えている「手続きの記憶」があります。「長期記憶」は脳の大脳新皮質の前頭葉とか、大脳辺縁系の偏桃体とか、その他あらゆる脳の部位を使って記憶を保存していきます。

私たちに大切なのはこの「長期記憶」を損なわないことなのです。インタビューをして脳の様々な部位に固定保存されている記憶の数々を想起再生させる、つまり思い起こさせる定期的な作業が必要となるのです。これが私たちの仕事のひとつです。

私たち『ライフヒストリー良知』は、この脳科学や心理学の知識や智恵、またこれまでの様々な実践や経験の中から、この「長期記憶」をいつまでも持続させるためのいわばセラピーとしての役割を担っているのです。

湖畔(1)