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聞き書き・ライフヒストリー / 智慧

「聞き書き言葉」とは?

「聞き書き」とは、語り手の話を聴き、それをその人の「話し言葉」で書いて、活字にして後世に遺すこと

聞き書きは、まず人の話を聴くことから始まる。しかし、なぜ、聞いた話をその人の「話し言葉」で書かなければならないか、それは、きちんとした文章で書かれたものと、「話し言葉」で書かれた文章を比べてみればよくわかります。例えば、

「山田さん、生年月日はいつですか?」
「えっ、私の生年月日ですか? えーとね、私が生まれたのは、昭和23年の10月1日ですよ。」
「どこで、お生まれになったのですか?」
「生まれは、京都の宇治ですよ。そう平等院で有名なあの宇治。私の実家はその平等院のすぐ近くなんですよ。そう私は京美人なんですよ。(笑い)」

これを普通の文章にすると、

『山田さんは、昭和23年10月1日に京都府宇治市でお生まれになりました。宇治と言えば平等院が有名ですが、山田さんの実家はその平等院のすぐ近くにあるそうです。京都の女性は、昔からよく「京美人」といわれてきましたが、山田さんはご自身のことを「京美人」だと笑みを浮かべながら冗談半分にお話しされていました。」

これを「聞き書き言葉」にすると、

『えっ、私の生まれた日って? 昭和で言うと23年やわ。そう私は団塊の世代なんよ。生まれた場所? 京都の宇治ってわかるでしょ? 平等院で有名なほらあの宇治よ。実家はね、その近くあるのよ。京都はずっと前から「京美人」ゆうてきれいな女が多いと言われてたん、知ってるわね。私も小さい時からね、京美人とゆわれてきたわ。冗談冗談、そんなわけないやん。』

このふたつの文章の大きな違いがわかりますか?

きとんとした文章で書かれたほうに比べて、「話し言葉」で書かれたほうが、語り手の人間性がにじみ出てるように感じませんか? いかにも京都の女性らしいしとやかだけど、どこかユーモアにとんだ女性像が目に浮かびますよね。

語り手の個性を生かす文章、語り手の口調や口癖、言い回しなどをそのまま残す文章、たくさんの方言が混ざっている文章、その人らしさがにじみ出る文章、これが「聞き書き言葉」なのです。