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記憶から歴史へ(オーラル・ヒストリーの世界)

今年に入って、ポール・トンプソンというイギリスの社会学者が書いた『記憶から歴史へ』という本を熟読していました。なかなか分厚い本を読むのはたいへんですが、私が求めていることが随所に散りばめられていましたね。

ヨーロッパでは昔から自分が生きてきた証として、自分史や回想録を書くことがさかんに行われてきたようです。功成り名を遂げた人ばかりでなく、ごく普通の人たち、あらゆる階級の人たち、お金があるとか豊かな生活をしてきたかを問わず、ひとりひとりの人生経験を書き綴ってきました。

話はできても書くことができない人たちが大勢います。この時、歴史を書き記す聞き手が必ずいるのです。ヨーロッパの国々ではグループを作って自分史や回想録を作成していますね。

このことをオーラルヒストリーと呼び、また話の聞き手をオーラルヒストリアンと呼んでいます。オーラスヒストリアンとは、言わば聴くプロであるとともに歴史家でもあるのですね。

オーラルヒストリアンは、どこでもインタビューに行きます。専門的なことをよく知っているお年寄りの足元に座るのです。あらゆる人たちから聞き書かれたものは、後世に生きる人たちに計り知れない価値を与えていきます。その時お年寄りたちは、尊厳や誇りを獲得することなのです。

また、オーラルヒストリーの衝撃的な進歩は、回想がセラピーの役割を果たすことに人々が気が付いたことです。これも私が以前からお話してきたことですよね。

ポール・トンプソンは、改めて私が進めていることを裏付けてくれています。
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