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「ライフヒストリー」と「自己物語」

心理学者の榎本博明さんは、「自分とは何か?」という問いに対する答えをより具体的につかむ方法として、「ライフヒストリー」や「自己物語」によって自分のアイデンティティをとらえるというのがあると言います。

私たちは、それぞれに自分の物語を持っています。私たちは数えきれないほどの過去の経験を背負って生きていますよね。自分の人生を振り返る時、またそれを人に語る時思い出すのは、自分自身が今抱えている物語とは矛盾しない意味を持つ出来事や経験に限定されるようです。

私たちは、毎日新しい経験を重ねて自分史の中に書き加えられていきます。しかし、それがバラバラな自分史の中に羅列されていくわけではありませんね。すでに抱えている自己物語の文脈に沿った経験やそれを強調する経験は、そのまま積極的に取り入れらます。しかし、それと矛盾する経験や脅かす経験は、無視されたり、歪曲されて取り入れられたりします。

つまり、私たちは「ライフヒストリー」や「自己物語」に強く拘束されて生きているのですね。 「ライフヒストリー」や「自己物語」を持つことによって、私たちの人生の一貫性や安定性を保つことができます。自分のアイデンティティが保持されます。

「人生の意味」もそうでしょう。「人生の意味」は、その人の経験をどう解釈するかによって生じていきます。「過去を変えられない」と言いますが、実は過去は解釈によって変えることができるのです。一定の自己物語の文脈の中で解釈されることによって生み出されていくのですね。

また、「ライフヒストリー」や「自己物語」は、過去の出来事や経験を一定の流れのもとに位置付けるだけでなく、将来の出来事や経験を方向づけるような流れをも持っています。つまり、「ライフヒストリー」や「自己物語」は、過去ー現在ー未来といった時間的な流れを持ち、それによって私たちの人生は、過去から現在、そして未来へと続く一貫したものになるのです。

「ライフヒストリー」や「自己物語」を生きることによって、私たちは人生の意味を知り、自分が何者であるかを納得します。その筋立てによって、私たちが自分らしい人生を綴ることを可能にしてくれるのですね。

そして、このような物語としてのアイデンティティ、そしてそれを暗示する「ライフヒストリー」や「自己物語」は、まさに記憶の力によって担われていくのです。

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