ライフヒストリー良知

ライフヒストリーブログ

「語って、聴いて、書いて、読んで」の事業コンセプト

聞き書きによる口述自伝“ライフヒストリー良知”の制作事業を進める中で、「語って、聞いて、書いて、読んで」という一連の行いを展開する分野は、いったい日本でどのようなものがあるのでしょうか?

これまでいろいろ調べてみると、

まず、柳田國男の〈民俗学〉。「遠野物語」という著書が有名ですよね。口述による伝承方法は遠い昔から世界中で行われていて、日本でも古くから存在していたけれど、柳田國男らによってその潮流が作られましたね。〈聞き書き〉という言葉はまさしく民俗学の専門用語です。

また同時期に「口述の生活史ー或る女の愛と呪いの日本近代」と題する作品を著した社会学者の中野卓は、〈ライフストーリー〉と称し〈社会学〉的な研究に尽力してきました。この本も社会学の世界ではとても名が知れ渡っています。

〈オーラルヒストリー〉という言葉が使われだしたのは1980年代あたり。この時代から個人の自伝や評伝を書くことが顕著になってきましたが、どちらかというと〈オーラルヒストリー〉は、〈歴史学〉の範疇において功成り名を遂げた政治家や官僚らの自伝を残す方法となっています。

今世紀に入り高齢化社会を迎える中で、高齢者に〈心理回想法〉という方法が、認知症などを予防したり改善したりすることを目的に〈介護学〉の一環として確立されてきました。

私は、介護福祉士としてこれまで百数十名に至る高齢者に対し、この〈心理回想法〉を行ってきて、その手法を研究したり技術を取得してきました。

そして〈自分史〉。これは歴史家の色川大吉が力を入れてきた分野で作家の藤本義一らも提唱し、今もブームになっていますね。自らが書き綴ることのほか、ゴーストライターなどが代筆するケースも増えています。

ビジネスという視点からみると、これらの事業モデルはほとんど似通っており、ビジネスマーケットの広がりはあまりないですね。よほどの有名人か話題になっている人のものでないと限り、書かれた本を読む人はほとんどいない。

誰がお金を出して文章を本にして出版するのでしょうか? 実は、これがもっとも重要なのです。これまでほとんどの場合、〈語り手〉としてお金を出すことはありませんでした。聴き手か書き手、或いは、読み手にお金を出して頂いていたのです。

私は、事業コンセプトが大事だと思っています。「語って、聴いて、書いて、読んで」の事業コンセプトをこれまでとは違うものに変えていく。このことによって、〈語り手〉に心から喜んでお金を出して頂く〈ビジネスモデル〉を作り出そうとしているのですよ。