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オーラルヒストリーとは何か?

〈オーラルヒストリー〉という言葉はあまり馴染みがありませんね。

政治学者の御厨貴さんは、その著書〈オーラルヒストリー〉で次のように定義しています。「オーラルヒストリーとは公人の、専門家による、万人のための口述記録」。インタビューの対象になるのは、まずは〈公人〉、つまり公的な立場にいる人、政治家や官僚などになるでしょうか。〈専門家〉とは僕らのようなインタビュアーのプロですね。〈専門家〉が〈公人〉に働きがけをして〈万人〉、すなわち一般の人々にわかりやすい文章を作成して読んでもらう。

御厨さんは、リンカーン大統領の「人民の、人民による、人民のための政治」という言葉を掲げて定義づけをしているのです。〈公人〉というのは、ややもすれば、国民が知るべく大切な情報を独り占めします。一部の人間だけに情報の占有はさせないという意味で、〈オーラルヒストリー〉そのものをデモクラシーとの関係で語りかけているんです。

では、〈オーラルヒストリー〉は〈公人〉に限られるのか? そもそも〈公人〉とは何か?〈公人〉とは文字通り〈国家公共に尽くした人〉ということです。御厨さんは、「一般的に〈公人〉と呼ばれる人は、勲章は頂くが、自分がやってきた事柄について世の中にきちんと報告する責務があるとは思っていない。」と言います。

「これまで日本では、どちらかと言えば〈言わず語らず〉が美徳とされた。〈雄弁は銀・沈黙は金〉なんですよ。語っても〈よく頑張った話〉や〈自慢話〉が中心になり、正しい記録として残らないことが多い」とも指摘していますね。

では、欧米はどうでしょう。「はっきり言えるのは、欧米先進国の〈公人〉たちは自らの体験談を話し伝えていく義務があると考えている。つまり公職に就くことの意味は、職を全うすることだけでなく、その経験を後世に残していくことまで含んでいる。」と言うのです。

確かに、欧米の有名な政治家は、必ず回顧録を書いてはじめて職務を終えていますね。つまり、歴史に対する証言者として、堂々と自分のやってきたこと、逆に挫折し失敗に終わったことでも赤裸々に残すことが政治的な伝統になっている。

一方、日本では、いかにも刹那主義でひとつのことが済めばそれでおしまい。後は言わず黙っておく。ただ、あの地位までいったのだから顕彰(功績を一般に知らせ表彰すること)ということになるのですね。

何も欧米のオーラルヒストリーの伝統や文化がすべて正しいわけではないけれど、日本でもその方のライフヒストリーが〈後世への最大遺物〉として伝承されていくことは素晴らしいこと、そこに僕たちの役割や使命があるのでしょうね。