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徘徊

高齢者施設のショートステイというのは、日常自宅で親を介護したり見守ったりしている家族が、仕事や冠婚葬祭、旅行などによってそれが出来ない時、介護士や看護士などが関わるホテルとして利用してもらう介護形態のことです。これがレスパイト。

利用者は短期で入所します。そこには認知症を抱える人もたくさんいます。

そのなかに帰宅願望を持つ人が少なからずいる。入所したとたん、「家に帰る」と持ってきた荷物を抱えて外に出ようとしますね。特に男性が多い。

『徘徊』というのは、認知症の代表的な症状ですが、僕たちは三つの観点から見るようにしています。

一つ目の見方が、脳の機能に異常が起きたことによって生じる症状、止めようとしてもどうしても振り切って外に出てしまうので、介護する者が悩まされる症状というのが二つ目の見方。

そして、三つ目がその人の中では昔に戻っていてその頃に住んでいた故郷の家に帰ろうとしている、或いは家族と離れるのが辛く寂しくいつも一緒にいたいと思って帰ろうとしているという見方。

医療が扱うのは一つ目で、介護する者に取って重要なのは二つ目と三つ目ですね。

つまり、周囲の人々と関係の中での認知症と、その人の人生の中での認知症なのです。

表に現れたのは同じ徘徊という行為でも、その人のおかれた環境や背負っている人生を理解する必要があるんですね。

でも、理解したからと言って、特別なことをやるわけではありません。ただ『早く帰れたらいいですね。』と外に出ようとする毎に、そばに寄り添い同じ言葉を繰り返すだけですね。

共感しながら辛抱強く。