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勝小吉と行動遺伝学

勝小吉のことをもう少し。

勝海舟の親父勝小吉が自伝「夢酔独言」を書き綴る動機になったのが、「孫やひこは、おれの血を幾らか受け継いでいるのだから、おれのようなとんでもない愚行をやりださないという保証はない」という考え方ですね。

つまり、「自分の行いや心持ちが子孫に遺伝するから注意せよ」とこれから生まれてくる孫やひ孫たちに警告しているのです。

『行動遺伝学』という心理学のジャンルがあります。『双生児法』と言って一卵性双生児と二卵性双生児の性格や行動を長い期間かけて調査分析し、その類似性を解明するという研究を長年慶応大の安藤寿康という先生が行ってきて数々の本を書いています。かなり難しい。

結論を言うと、『人間の能力や性格、心の働きと行動のあらゆる側面があまねく遺伝の影響を受けている』『遺伝の法則に心や行動も従っている』ということですね。

これに基づくと、先祖の生き様とか、その人が何を考えどんな職業や生活について自分の能力や資質を発揮してきたか、なぜ失敗し退却を余儀なくされたかなどを知ることは、今を生きる子孫にとって、何に注力して努力し、どう生活環境や習慣を変えていくかへの道しるべになりますね。

このことは、NHKの人気番組『ファミリーヒストリー』の数々を場面を見ていても明らか。

さらに、自分の能力や性格、考え方や行動様式、成功体験と共に挫折の経験なども赤裸々に子孫に伝えることで、彼らの生きる選択肢が大きく拡がっていくことになるでしょう。

その意味で、勝小吉が遺した『夢酔独言』はその子勝海舟をはじめ勝家の子孫たちの大きな宝物になったに違いありません。

その家宝を作ることに全力を注ぎます。