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なつかしさを支える記憶システム

以前、『「なつかしさ」にはどの脳の部位が使われているか、後日説明しましょう』ってお話ししましたね。

記憶には、大きく分けて、短期記憶(感覚記憶、作業記憶など)、長期記憶(エピソード記憶、意味記憶、手続きの記憶、プライミングなど)がありますが、ここでは、長期記憶のことについて書きます。

エピソード記憶には自伝的な記憶が含まれていて、それは「自分がいつどこで何をしたのか」という体験の記憶であり、意味記憶とは「何年にいつどこで何が起きたのか」という知識の記憶のことです。手続きの記憶とは「自転車の乗り方、料理の仕方など」いわゆる体で覚えた記憶で、プライミングとは、例えばフ□ンスと書いてあればフランスと直ぐ出てくるように、いったん覚えたことは次から思い出しやすくなるという無意識の記憶システムのことですね。

その人といつどこで出会ったかを思い出すときの“意識状態”のことを「メンタルタイムトラベル」と言います。これがエピソード記憶のもっとも重要な特徴で、なつかしさが感じた時に思い出されるのがまさにこの「メンタルタイムトラベル」で、「過去への憧憬」とも訳されていますね。

最近の研究によると、エピソード記憶や「メンタルタイムトラベル」は未来を想像することにも大きな役割を果たしていることが明らかになっています。つまり昔体験したことを思い出すことと未来の出来事のプランニングに共通の特徴があると言うのです。それは脳の神経基盤から確認することができます。専門的になりますが、過去、未来ともそれを築き上げる段階では、後頭葉の視覚野と左の海馬、それを高めていく段階では、前頭葉をはじめ、海馬や海馬傍回を含む側頭葉内側部、後部帯状回の同じ領域にはっきりとネットワーク活動が見られているようです。

脳の血流量などを測定する機器類が開発されてから脳科学はすさまじい進歩で、これによって人の心も読み取れる可能性が出てきましたね。つまり、昔のなつかしい出来事を思い出しその感情に深く浸ることは、これまでややもすれば、過去への後ろ向きの心の働きと考えられてきたけれど、実はそうではなく、それは未来への計画や希望を作り出していく心の働きなのですよ。

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