ライフヒストリー良知

良知の知識と智慧

心理学ーカウンセリング / 書籍

≪回想法≫

【黒川由紀子(上智大学大学院教授・臨床心理士)】
●高齢者には長い人生の歴史の中で培ってきた心の底力がある。
●人は、高齢になり死が近づくと、「自分が生きてきた人生の意味は何だったのだろうか」と意識的、無意識的に考えるようになると言われる。ある人は「生きてきた意味」を、自分の人生史に関する自伝を書くなど言語的なレベルで模索するだろう。ある人は芸術作品の制作や創造的な活動を通じて模索し、ある人は身体の症状に通じて内的な問いを表現する。
●課題を解決したり内なる世界をみつめる道程を共に歩む者としてのカウンセラーの守りを得て、心理療法によって、自らの心に穏やかに向き合っていく過程を共に歩むことは意味の深いことである。

≪認知症と回想法≫

【黒川由紀子(上智大学大学院教授・臨床心理士)】
●「回想法」とは高齢者の過去の歴史に焦点をあて、過去・現在・未来に連なるライフヒストリーを傾聴することを通じ、その心を支えることを目的とする技法である。
●家族関係など、表現型はばらばらで、何の共通点もないようにみえるが、話をよくよく聴くと、井戸を深く掘るにしたがって、地下水は底でつながっている。
●子どもや孫に、「たくさん伝えたいことがあった」ことを再認識し、機会をとらえて伝承しようと根気よく試みる人もあれば、「どうせ話をしても無駄。時代がすっかり変わってしまったから」と、悟りとも諦めともつかない境地に至る人もある。

≪驚きの介護民俗学≫

【六車由美(民俗学学者・介護福祉士)】
●私は、利用者への聞き書きにいつも「驚き」を感じる。話の展開のなかでこれまで聞いたことがないような職業の経験者であることがわかったり、こちらが予想もしなかった人生を背負って生きてこられた方であることを知ったり、あるいは利用者がふと見せる行動にその方の生活史ばかりでなく時代が見えてきたりする。
●聞き書きでは、社会や時代、そしてそこに生きてきた人間の暮らしを知りたいという絶え間ない学問的好奇心と探求心より利用者に語りストレートに向き合うのである。そこでは利用者は聞き手に知らない世界を教えてくれる師となる。
●お聞きしたものを『思い出の記』としてまとめ、利用者本人とともにご家族にも渡すようにしている。
  その『思い出の記』が民俗学でいう保存と継承の役割を果たしているのではないかと思うのだ。

≪老年期≫

【エリク・H.エリクソン(精神分析学者)】≪解説≫
●エリクソン発達心理学
~エリクソンの8つの発達段階論~
人は生まれてから老いに達するまでの人生のライフサイクルの中で、各時期に達成しなければならない「課題」がある。
●人として生きている限り、成功と失敗による“心の葛藤”が生まれてくる。この葛藤が心理・社会的危機となる、
●人の一生を 「8つの段階」 に分け、それぞれの時期に必要とされる獲得段階論を提唱している。
※ライフサイクル8段階
1:乳児期    ・・・(基本的信頼VS 不信)
2:幼児期前期    ・・・(自律性VS 恥・疑惑)
3:幼児期後期    ・・・(自主性VS 罪悪感)
4:児童期    ・・・(勤勉性VS 劣等感)
5:思春期・青年期・・・(アイデンテティVS アイデンテティの拡散)
6:成人期  ・・・(親密VS 孤立)
7:壮年期    ・・・(世代性VS 自己陶酔)
8:老年期    ・・・(統合性VS 絶望)
●それぞれの段階では克服すべき「課題」があり、各段階には「肯定的側面 対 否定的側面」 が対(VS)となって設定されている。
●どちらか一方の「否定的な部分」を抱え受け止めながらそれを克服し、「肯定的な部分」を自分自身の心の糧にできた時、それが豊かさの根源となり、次の段階の大きなステージへと導かれる。
●自己同一化(アインティティ)することだ。同一化とは、自分の持つ意識が他人と同じもの、変わらないもの、固定しているものではなく、葛藤を受け止め乗り越えることによって“統合”していくものだ。
●それぞれの段階に応じた獲得すべき課題を自らの心で上手く乗り越えられているかにより、以降の人生でその人の心の持ち方に大きな影響を及ぼしていく。
●私達は生まれてから、母親の愛情を受けることによって“信頼関係”を築き(乳児期~幼児期)、自己の考え方(価値観)に触れ、やりたいことの興味を育みながら、将来の夢や職業、自分らしさなどを見つけ、“自分”というものを確立していく。(児童期~思春期)。友人を作り、異性と出会い、社会に出て、様々な人々とのコミュニケーションを行いながら「成人期」を迎え、仕事、結婚、子育てなどの経験を通じて統合する時期として「成熟期」を迎える。
●そして、人生における “英知” を獲得してゆく。「エリクソンのライフサイクル論」だ。
●老年期≪第8段階≫(統合性 VS 絶望)-導かれるものは「英知」「老年期」とは、おおむね“65歳以降(子育ての終了以降)”までの期間を示している。
●この時期に克服が必要とされている“課題”は-統合性 VS 絶望」
●「老年期」は、家庭の面では子育てが終わったり、仕事の面では退職したりと、それぞれに人生を経てきた中でいよいよ役割の方向転換を迫られる時期。
●この時期に必要となるのは、“自分の人生の聞き手との出会い”だ。
●この時期には、これまで歩んできた人生の振り返りの時期でもあり、「人生を自らの納得に基づいて歩んでこれたかどうか」を見つめ直す時期。
●人生を歩んできた過程の中では、良いことや悪いこと、上手くいったことや上手くいかなかったことがある。成功したことや失敗したこと、その全てを受け入れていく時期になる。自己を形成していくための人生としてそれらを受け入れられたなら、統合性、すなわち “自己を肯定できる心” を育ませていく事ができる。
●統合性を受け入れていく過程においては、これまで獲得してきたそれぞれの段階における「同一化」が獲得されてきたかとどうかの度合いによって、自ら納得できうるものになるかのどうかの分かれ道になる。
●“死”と言うものの受け入れを始める時期に入っていく。今まで歩んできた人生を受け入れていく事が出来たなら、統合性のとれた状態が自らの死をも受け入れる心を育ませていく。
●しかし、自分の歩んできた人生に満足感が得られない場合には、「統合性 < 絶望」となり、自分の人生に納得できず、後悔しながら「絶望感」を強く心に抱いてしまう。仕事や家庭、或いは個人としての役割について、納得感をもってそれぞれの段階の「課題」を克服してきた部分がある反面、それらが獲得出来ていない場合にどうしても「絶望的」にならざる得ない。
●「老年期」を衰退といった悲観的な考えで受け入れてゆくのか、それとも、マイナス要因をもちながらも、肯定的な考えで受け入れていくのか。それぞれの段階においての「課題の克服」は、いずれも “他者との関わり合い”を通じて「自分」というものを確立していく。つまり“同一化”することによって、“自分は自分である”いった“考え”や“価値観”を持ち成熟された「英知」が導かれてゆく。
●「老年期」に、これまでの人生が、例え、後悔に満ちた人生であったとしても、「この世に生まれ、この世界に残してきたものがある」と思えるなら、自らの人生を“肯定できる人生”へと心を育ませていくことができる。
●「これまで獲得できなかった部分を少しづつ補いながら生きていけばいいのだ」と統合性を養いながら内面的に満たされるものとなる。
●人生の最終段階で「自我の統合性 > 絶望」は、「英知」によって導かれ希望に変わっていく。
●老年期を迎える人々に対する心的・社会的支援者としての役割が、その人の人生の聞き手である私たちライフヒストリアンにある。自らの人生が「これで良かったんだ」と思えるか、否かは、“自分の人生の聞き手との出会い”によっても大きく左右されるのではないだろうか。

≪言語心理学≫

【針生悦子編(大学教授)〕
(文章産出:物語ること・書くこと・考えること)
●忘却のかなたに抑圧し続けてきた体験をことばの力を借りて織り紡ぎ、意識化や抽象化することによって記憶の連続性や整合性を回復することができるのだ。この自分史の再構成の過程で人は癒され、生きる力が与えられるのである。
●「あとがき」の文章で書くという作業について、次のように書いている。「書くまでは何か新しいものを発見するとは思いませんでした。しかし、書く度に必ず新しい発見に出会います。」●その新しい発見とは、「生きていてよかった」「自分が生きているのは意味のあることだ」ということを確認する作業にほかならない。人は自分自身の発見のために、整合的な世界の中心に自分自身を位置づけるために生きている意味を実感し、確認し、さらに生き続けるために、文章に著すという営みに従事するのである。
●思想や表象を文章に書くということが新しい発見をもたらす。ときにはその発見は生きる意味を見出すことにながることがある。そして人を癒し、人に生きる力を与えることすらあるのである。これこそが人を文章に書くという営みに駆り立て、動機づけるものなのかもしれない。

≪記憶から歴史へ(オーラルヒストリーの世界)≫

【ポールシンプソン】
●歴史は究極のところ、その社会目的に支えられている。
●あらゆる種類の人々の人生経験が、生の資料の人生経験として歴史研究に使われるようになれば、新しい方向性が歴史に与えられる。オーラルヒストリーは刊行された自伝と非常に似通った歴史史料であるが、自伝よりはるかに広い範囲に及んでいる。
●よりよいインタビューアーになるためには、人間関係を理解することなど、新しい技術が歴史家に要求される。
●歴史家は学ぶためにインタビューに行き、異なった社会階層のの出身者であまり教育を受けていない人々、何かについて自分たちよりもよく知っている老人の足元に座るのである。
●歴史の再構成は、それ自体もっと広範な共同作業に基づく過程となり、そこでは専門家でない人々が決定的な役割を果たす。書くことと、書いたものをあらゆる種類の人々に提示することを中心することによって、歴史ははかりしれないものを得るのである。
●同時に、年老いた人々が特に恩恵を受ける。
●オーラルヒストリープロジェクトは、老人たちに新たな社会的接触をもたらすだけでなく、時には長く続く友情をもたらすこともある。あまりにも頻繁に無視され、経済的にも無力にされていても、彼らの人生を振る返り、若い世代に価値ある情報を伝えることによって、老人たちは尊厳と目的意識を獲得するのである。

北海道の牧草ロール

 ≪エイジング心理学≫

【谷口幸一・佐藤眞一(医学博士)】

≪読む心・書く心(文章の心理学入門≫

【秋田喜代美(教育学博士)】