ライフヒストリー良知

良知の知識と智慧

失敗学 / 書籍

ライフヒストリー良知は、『お客様の成功体験だけでなく失敗や挫折体験も、
可能な限り後世に伝えていきませんか』と提案しています。

「売り家と唐様で書く三代目」という言葉があります。初代が苦労しながら経済的基盤を作った商売は、その姿を近くで見ていた二代目が継承し発展させていきます。しかし、先々代の苦労や失敗を知らない恵まれた三代目になると、簡単に身代をつぶしてしまうことがよくあるという例えですね。

家業のダメにしたこの三代目はまったく能力がないかと言えば、そうではありません。逆に知識だけは人一倍身につけていることが多く、句の中にある唐様というのは、中国風の凝った書体で「売家」の張り紙を書くというところにそれがよく現れています。苦労知らずで商いの道はうとく、そのくせ使えない知識だけは持っているという、その愚かさを皮肉ったのがこの句に込められた意味なのです。

この句は、失敗情報の性質をよくいい表しています。失敗情報は時間の経過やいくつかの経路を通るうちに急激に減衰する傾向があるというものです。だいたい、当事者の次の人くらいまでは失敗情報が伝わっていても、その次の人くらいから、情報があまり伝わらなくなるのはよくあることです。世代間の伝達に至っては、この句にあるように、祖父母から孫にいくあたりで著しく減衰していくのです。

「失敗学」(畑村洋太郎)

◆失敗から学ぶ

人が新しいものを作り出すとき人は失敗から学ぶのは当然のことだ。人は失敗から学び、さらに考えを深めていく。現在は、「失敗は成功のもと」「失敗は成功の母」という考え方がほとんど取り入られていない。

◆失敗の法則性

大切なのは、失敗の法則性を理解し、失敗の要因を知り、失敗が本当に致命的なものになる前に、未然に防止する術を覚えること。これをマスターすることが、小さな失敗経験を新たな成長へ導く力になる。

◆失敗は隠したくなる

失敗はつい隠したくなるもの。失敗情報は単純化したがる。失敗の原因は変わりたがる。失敗は神話化しやすい。失敗の情報はローカル化しやすい。

◆失敗を語らせる

失敗したその人がどんなことを考え、どんな気持ちでいたかという、第一人称で語られる生々しい話だ。時としてこの中には外部の人から伺い知ることのできない真の失敗原因が隠されている。だから当事者に自由な気持ちで失敗を語らせることは、失敗情報を伝える上でたいへん重要なポイントとなる。

◆失敗の知識化

ひとつの失敗から教訓を学び、これを未来の失敗の防止に活かしたり創造の種にしたりするには、ひとつは失敗の事象から総括まで脈絡をつけて記述すること、もうひとつは失敗を「知識化」する作業が必要だ。「知識化」とは起こってしまった失敗を自分及び他人が将来仕える知識にまとめること。失敗情報の正しい伝達には不可欠なことだ。

◆失敗を活かして次に失敗しないようにするには、必ず結末に至るまでの脈絡を自分で把握する必要がある。脈絡を知らないと、本当に失敗を知ったことにはならない。

◆失敗を知識化するための出発点となるのは「記述」すること。次に「記録」しなければならない。だいたいの人が「記述」するところまでで終わってしまっている。大切なのは、「記録」のあとに「知識化」という作業を入れることだ。知識化してはじめて使える失敗情報となる。

◆そして最後の来るのが、「伝達」というプロセス。個人の周辺に関わるものは、関係者に対する積極的な情報伝達が必要だ。この「伝達」は、時間や空間を越えて広く伝えられていく場合、「伝承」という呼び名に変わる。

⇒ ライフヒストリー良知が失敗・挫折などを聞き書きして「記述」「記録」「知識化」のプロセスを経て、それを今を生きる人たちに「伝達」すると共に、後世に「伝承」というかたちで遺していくところに意味があるのです。