ライフヒストリー良知

3 語ることで心豊かに!

3-1回想

語り手であるみなさまが昔を振り返り、それをまとめて一歩を踏み出すとき、これから豊かな発想が生まれます。それが今後の暮らしに良き影響を与えていくに違いありません。

私たちライフヒストリアンと共に過去を回想することによって、さまざまな人間関係や出来事のほつれを修復することができるでしょう。後悔や罪責感よりも、それとしっかり向かい合うことによって生じるプラスの効果の方が大きいのです

ライフヒストリーが多少あいまいであったとしても、その姿が明らかになるにつれて、過去の体験がしっかりしたかたちを成してきます。写し出された回想を今に表現することによって、この経験を作ってきたのは私自身であるという自覚が生まれます。

そしてそれを楽しんだり、喜んだりすることができる。回想を積み重ね、写し出されたものを適切に選んでいくことで、いきいきと暮らすことができるのです。

昔を回想し、ご家族や友人たちに対する慈しみの感情や感謝の気持ちを再現することによって、次の世代を創造することができます。

また、今暮らしている地域の風景や環境への愛着心がごく自然に思い起こされます。そして「自分の生きてきた姿を残したい」「この思いを次の世代に伝えたい」という気持ちが芽生えてくるでしょう。

そして、泉のように思い出されるこれらの事柄を、「集めて、まとめて、文字にして残していこう」という気持ちになっていくに違いありません。

3-2 なつかしさ

なつかしさの感情は、喜怒哀楽のような表情のある感情とは違い、複合的な感情ですね。なつかしいという感情に自分や他人が理解するためには、手がかりとなるものが必要です。つまり、旧友と会った、昔聴いた曲を聴いた、というものがあって、なつかしいという感情が起こったことがわかるのです。

なつかしさとは、日本語の古語『なつかし』が、動詞『懐(なつ)く』から形容詞化したものですね。元々は心惹かれて離れがたいことから、魅力的であること、すぐそばに身を置きたいことを意味しています。それが時代を経て、かつて慣れ親しんだ人や事物を思い出して、昔に戻ったようなポジティブな気分を示すようになりました。なつかしさを感じる風景は、学校や故郷にかかわる風景。時間は夕日・夕焼けなど夕方が多い。また山や海や川など田舎の風景とか、祖父母の出現頻度が多いですね。